「プロバイオティクス」サプリメントとは?基本とおすすめを薬剤師が解説

「プロバイオティクス」サプリメントとは?基本とおすすめを薬剤師が解説

“腸活”の流行とともに「プロバイオティクス」や「プレバイオティクス」に関するサプリメントが今、注目を集めています。前者は乳酸菌やビフィズス菌などの善玉菌そのもので、後者はオリゴ糖や食物繊維など善玉菌のエサとなる成分のこと。今回はこのうち、「プロバイオティクス」に関する歴史や基本的な知識、取り入れ方とおすすめについて紹介します。

100年以上前に存在していた「プロバイオティクス」の歴史

「プロバイオティクス(probiotics)」という概念は、ウクライナ人でノーベル生理・医学賞を受賞した免疫学者のエリー・メチニコフ(Elie Metchnikoff)による、1907年に発表の論文で展開された生命理論※が始まりです。その背景には、1880年代に別の科学者によって明らかにされた、ヒトの腸内に生息する無数の細菌群における発見がありました。

 

そこから数十年たって、「プロバイオティクス」という用語が誕生します。当時は、「他の微生物の増殖を促進する物質」と定義されていました。これには、1940年代以降で盛んに使用されていた抗生物質(アンチバイオティクス、antibiotics)に対比する意味合いがあるという説も。その後、何人もの研究者によって詳しい検討が加えられ、「宿主に有益な効果をもたらすことができること」や、「病原性や毒性を示さないこと」などの必要条件も設定されていきました。

 

そして2019年の頭には、この言葉をつかった論文が20,000件を超えるほどに増加。近年の次世代シーケンサー※による研究も進んだことで、さらに多くの論文が今も集積されつづけています。

 

※「ESSAIS OPTIMISTES(楽観主義者のエッセー)」(英語版:The Prolongation of Life: Optimistic Studies, 1908):乳酸菌による健康維持と長寿の実現に関する理論について展開。

 

※次世代シークエンサー(next generation sequencer):DNAの塩基配列を決定する装置のことで、21世紀に入り、これを活用した腸内細菌の分析が飛躍的に進んでいる。

「プロバイオティクス」はいつから市場に?

メチニコフの概念「プロバイオティクス」は、数々の検討や修飾も加わり、昨今では多くのヘルスケアに関する雑誌や媒体がとり上げるまでに周知されてきました。この概念が取り入れられた健康食品やサプリメントは、1917年のドイツで開発された生菌製剤「Mutaflor®(ムタフロール、のちのE,coli Nissle 1917株)」が始まりとも。これは、今でも売られている1世紀以上にわたるロングセラー商品です。

ちょうどこの頃、日本ではヨーグルトの販売が始まりました。そして間もなく発売された日本屈指の乳酸菌飲料も、この「プロバイオティクス」を代表する健康食品のひとつと言えるでしょう。

“プロバイオティクスサプリ”って、結局どういうもの?

現在、市場には「プロバイオティクス」に関するサプリメントが多々あるものの(以降、プロバイオティクスサプリと略)、すべての商品にそう書かれている訳ではありません。たとえば乳酸菌だけでも複数あり、ビフィズス菌や酢酸菌、酪酸菌などもふくめると、いったい何を選べばよいのか迷うひともいるでしょう。

 

ここで、「プロバイオティクス」が食品として機能を発揮するために、必要な条件が6つあります。ただし、これらの条件には近年、注目を集めている「バイオジェニックス」の概念が含まれていません。この概念は、生菌だけでなく、プロバイオティクスである微生物の菌体成分や代謝産物(メタボライト、metabolite)も有効であるということを意味するものです。

もしかしたら、このような背景もあって、あえて商品に「プロバイオティクス」と表記しない企業もあるのかもしれません。

 

【プロバイオティクスに必要な6条件】

 

  • ① 安全性が十分に保証されていること

  • ② もともと腸内フローラの一員であること

  • ③ 胃液や胆汁に耐えて腸内に到達できること

  • ④ 腸内に付着し、増殖できること

  • ⑤ 食品の形態を保ち、有効な菌数が維持されていること

  • ⑥ 安価で用意に取り扱えること

 

「プロバイオティクス」を取り入れるには?

善玉菌そのものを指す「プロバイオティクス」を食品で摂るなら、ヨーグルトや納豆などの発酵食品がおすすめです。また、時間がないときや手軽に摂りたいときにはサプリメントも有用でしょう。ひとによっては、“生きて腸に届かないと意味がない”と思うかもしれません。しかし、これを前述の「バイオジェニックス」で考えると、そうでもないことが分かります。また、サプリメントの多くが錠剤やカプセルなどに加工されているため、善玉菌が活動を始める状態になるまで時間がかかるという見解も。

“プロバイオティクスサプリ”を試そうか迷っているひとへ

ふだんの食事をバランスよく摂っているというひとが、サプリメントも摂ったほうがよいのかどうかを知るには、便の形状を見てみることがひとつの方法です。腸内細菌がよい状態のときには、酸がたくさん作られていることで、便の色は黄色から黄色がかった褐色に見えます。そして、形状は柔らかいバナナ状が理想です。この理想の便を目指して、サプリメントの摂取を試してみてはいかがでしょうか?

自分にあった「プロバイオティクス」を調べるには?

ヒトの腸内細菌が約1,000種類で構成されるうち、99%以上を占めているのが4つの門※に属する菌で、それが約30~40種類あると言われています。つまり、特定の菌がそのひとにとってヒットするかどうか(腸内フローラの一員であるか、腸内に付着して増殖できるか)は、飲んでみないと分かりません。

これには、最近よく見かけるようになってきた“腸内フローラ検査”をおこなうことで、自身の腸内細菌における組成を知ることもできます。ただ、現在は保険適用がないため、その費用はさまざまであることに注意が必要です。

 

※門(もん):菌の分類階級のひとつ。階級と学名は大枠から順に、ドメイン(domain)、門(phylum)、網(class)、目(order)、科(family)、属(genus)、種(species)に分類される。ヒトの腸管内を構成する大部分は、ファーミキューテス門(Firmicutes),バクテロイデーテス門(Bacteroidetes),プロテオバクテリア門(Proteobacteria),アクチノバクテリア門(Actinobacteria)の4つ。

おすすめの“プロバイオティクスサプリ”と注意点

ひとまず、プロバイオティクスサプリはバラエティ豊かに善玉菌をふくんでいるものがおすすめと言えるかもしれません。もちろん、腸内フローラ検査などで自身の腸内細菌の組成を知っているひとは、それに応じた選択も有用でしょう。また、善玉菌のうち、免疫や神経系など全身に働きかけることが近年の研究で分かってきた、酪酸菌※をふくむものもおすすめです。

 

ただし、どの場合も「摂った善玉菌は腸のなかで永くとどまるものではない」ということを念頭に置いておきましょう。ふだんの食事で「プロバイオティクス」となるような、多彩な栄養素の摂取を心がけること。そして、これにサプリメントも活用しながらさまざまな善玉菌を取り入れつづけることが賢い選択です。

 

※酪酸菌:大腸に生息する腸内細菌の一種で、酪酸をつくり出す細菌の総称。酪酸は大腸の主要なエネルギー源となるほか、酸素を消費することで大腸内がビフィズス菌やほかの善玉菌のすみやすい環境となるよう整える。

この記事を書いた人

ドラッグストアで売っているサプリメントの効果は? 株式会社リテラブースト 代表取締役 曽川雅子
資格 薬剤師、登録販売者、保育士
経歴 現・東北医科薬科大学卒。2017年に株式会社リテラブーストを設立し健康に関するイベントや、健康診断でなじみの9項目が指先から1滴の血液ですぐに分かる検体測定室(簡易血液検査)をプロデュース。15年間の薬局勤務と人事経験を活かした執筆活動では、大手の介護系企業や製薬企業からウェルネスに関する総合情報配信サイトまで2年間で累計100本を超える記事提供の実績がある。

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