「睡眠の質」向上サプリメントの最新動向を薬剤師が解説

「睡眠の質」向上サプリメントの最新動向を薬剤師が解説

現代ストレス社会では日中のみならず、夜間の睡眠時間においても“整える”ことが求められています。睡眠の役割は“単なる疲労回復”ではなく、脳と身体を点検し修復する“究極のメンテナンス”です。今回は、いま話題の「睡眠の質」向上をうたうサプリメントの作用やちがいについて解説します。

“GABA”に“L-テアニン”、「睡眠」サプリの主流は?

2022年8月時点で、睡眠に関する機能性を持つ成分は60種類を超えます。その商品数は400件以上におよぶものの、内訳をみると約6割を占めているのが次の3つの成分です。

 

第1位:GABA(γ-アミノ酪酸)

第2位:L-テアニン

第3位:ラフマ由来ヒペロシド・ラフマ由来イソクエルシトリン

各成分の特徴その① GABA(γ-アミノ酪酸)の機能性

1つ目のGABA(ギャバ、γ-アミノ酪酸、ガンマアミノらくさん)は、広く自然界に存在しているアミノ酸のひとつで発芽玄米や発酵食品に多く含まれています。アミノ酸といっても、筋肉のもととなるタンパク質を構成するものではありません。食品として摂るほか、体内ではグルタミン酸からもつくられます。

その作用は、脳内で抑制系の神経伝達物質としてはたらき、「副交感神経」の作用を高めることで不安や興奮を和らげるというもの。これにより現在、「睡眠」に加えて「疲労」に関する機能性でもトップを走る届出件数です。

市場動向に驚愕!GABAが注目を集める理由とは?

GABAの「副交感神経」への作用に対し、最近では「交感神経」への作用も注目を集めています。そのしくみは、血管を収縮させるノルアドレナリンをGABAが抑えることで血圧が上がるのを抑制するというもの。たとえば、大手青果メーカーが販売するバナナに、“血圧が高めの方の血圧を下げる”という機能性表示を見たことのあるひともいるでしょう。一方、大手清涼飲料水メーカーが販売するトマトジュースも同様です。さらに、複数の乳酸菌を混合培養するとGABAが産生されるということを突きとめた特許製法を持つ、乳酸菌関連メーカーも。

 

おどろくのは、筑波大学発のベンチャー企業もこのGABAについて研究をおこない、新規技術を用いた日本初のゲノム編集食品で、“GABA高蓄積トマト”が2022年9月以降に発売されるのだということ。これらの動向から見てもGABAは、サプリメント業界にとどまらず、多くの業界が注目している成分であることに間違いないでしょう。

各成分の特徴その② L-テアニンの機能性と動向

2つ目のL-テアニンは日本で1950年に玉露から発見されたアミノ酸の一種で、一般に飲まれている緑茶1杯での含有量は8~30㎎ほどです。研究では、決められた濃度の範囲でPPI※(神経疾患で障害の多いとされる、感覚連動フィルター機構)を改善することが報告されています。

ここで、「口から摂取したL-テアニンが本当に脳に行き届くのか?」と不安に思うひともいるかもしれません。これについては、ラットで0.5~2時間後に脳血流関門※を通過し脳内で検出されることと、ヒトで0.5時間から脳の活動に変化の生じることが分かっています。

 

機能性のしくみでは、L-テアニンの構造がグルタミン酸と似ていることから、脳機能の中心部分を担うグルタミン酸系神経に関与し、認知機能や気分への影響が指摘されているのです。これは、ラットを用いた動物実験でその効果が明らかにされ、とくに記憶や“関連付け学習”の成績が上昇したとの報告も。さらにヒトでは、医療現場でもつかわれている認知症治療薬と比較した研究もおこなわれ、含有量に応じた結果報告がなされています。

 

現在、L-テアニンに関する研究はまだ解明しきれていない部分もあり、すでにおこなわれている産学共同の研究が一層、進んでいくことが期待されるでしょう。

 

※PPI(prepulse inhibition、プレパルス抑制):視覚、聴覚、触覚などのあらゆる感覚刺激において、突然に起こる強い刺激(驚愕刺激、パルス)の、直前に比較的よわい刺激(プレパルス)を先行させることで驚愕反応が大幅に抑制される現象のこと。小さな刺激から得た情報を、直後の大きな刺激から保護するための付随的な抑制システム。

 

※脳血流関門(血液脳関門ともいう):blood-brain barrier、略称:BBB。血液と、脳(脊髄を含む中枢神経系)の組織液との間に存在する、物質の交換を制限する関門のようなもの。

各成分の特徴その③ ラフマ由来ヒペロシド・ラフマ由来イソクエルシトリンとは?

3つ目のラフマ由来ヒペロシド・ラフマ由来イソクエルシトリンについて、「なぜこれだけ2種類の名前があるのか?」と疑問を抱いたひともいるでしょう。それは、どちらも“ラフマ”というキョウチクトウ科に属する植物に含まれるフラボノイド配糖体で、それぞれに結合している糖の種類がことなるから。

“ヒペロシド”にはガラクトース(Galactose、略称Gla)が、もう一方の“イソクエルシトリン”にはグルコース(Glucose、略称Glc)が結合しています。これらのどちらか一方にだけ作用があるという訳ではなく、ふたつを合わせた“ラフマ抽出液”として利用しているために、このような書き方になっているのです。

論文などでは学名(Apocynum venetum Leaf、アポシナムベネタムリーフ)をとって、AVLE(アポシナムベネタム葉エキス)と書かれることが多いため、成分の名前で検索しても見当たらないという経験をしたひともいるでしょう。

“ラフマ抽出物”の機能性に関するエビデンス

“ラフマ”には、古くから中国で「心のビタミン剤」としてお茶に煎じ、親しまれてきたという経緯があります。研究ではラットを用いた動物実験で血圧上昇抑制、脂質の酸化抑制における有意差や、肝臓保護に関する報告も。しかし、現段階でこれらの作用については、ヒトでの研究報告が待ち望まれているところでしょう。

 

一方で、抗ストレス作用や集中力の向上については、ヒトでの研究データがあります。

まず、唾液を用いた研究では、自律神経系の精神ストレスを測る指標のひとつである「ヒト唾液クロモグラニンA(CgA)」の濃度を測ることでストレス低減効果を評価。その結果、ラフマ抽出物を摂取した群のほうがプラセボ摂取群よりもCgA濃度が低く、さらにラフマ抽出物とGABAを併用した群の方が低い濃度でした。これにより、ラフマ抽出物の抗ストレス作用を裏付けることはもちろん、GABAを併用することでの相乗効果も示した形です。

また別の研究では、40人の健常者に対して4週間、ラフマ抽出物を摂取した結果の集中力と、日中の眠気や日常生活における心理的ストレスについて有意差があると報告。

そして睡眠に関する研究では、ラフマ抽出物を7日間にわたり摂取することで、ノンレム睡眠の時間割合が増えて深い睡眠をさそい、「睡眠の質」向上に寄与する可能性があるという報告があります。

「2に1人が中途覚醒で困った」という日本人の睡眠事情!

2020年におこなわれた調査によると、2人に1人が「睡眠途中に目が覚めて困った」という睡眠に関する悩ましい実態も。じつは、日本における睡眠導入剤の処方数は、世界で2番目という多さです。しかし、効果がつよくて保険が利くために安いというメリットとは裏腹に、休薬や終了のタイミングが難しいといったリスクも考えなければなりません。

そこで、「睡眠導入剤を飲むことは考えていない」というひとなら、サプリメントを試してみるのも方法のひとつです。近年では動物実験だけでなく、進歩した測定技術などをつかってさまざまなヒトに関するデータも蓄積されつつあります。まずは自分自身で調べてみて、不安なひとは専門家に相談してから試してみるようにしましょう。

この記事を書いた人

ドラッグストアで売っているサプリメントの効果は? 株式会社リテラブースト 代表取締役 曽川雅子
資格 薬剤師、登録販売者、保育士
経歴 現・東北医科薬科大学卒。2017年に株式会社リテラブーストを設立し健康に関するイベントや、健康診断でなじみの9項目が指先から1滴の血液ですぐに分かる検体測定室(簡易血液検査)をプロデュース。15年間の薬局勤務と人事経験を活かした執筆活動では、大手の介護系企業や製薬企業からウェルネスに関する総合情報配信サイトまで2年間で累計100本を超える記事提供の実績がある。

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