前編では紫外線対策に関するサプリメントの注意したい、ウソ・誇大広告の可能性がある表記例や話題の成分「フェーンブロック」と「ニュートロックスサン」の捉え方について、「SPF」や「MED」の知識も交えながら解説しました。今回の後編では、肌におけるダメージの仕組みとそれに働く機能性成分の特徴や、注目を集めている成分について紹介します。
肌の奥で起こる紫外線ダメージのメカニズムとは?
紫外線による肌のダメージは、大きく2つに分けて考えることが出来ます。ひとつは、「UV-B」による皮膚表面の紅斑(こうはん、赤くなるヤケドのようなもの)で、これは“飲む”日焼け対策サプリメントではほとんど防ぐことが出来ません。
もうひとつは、「UV-A」によって皮膚の奥のほうでひき起こされる“光老化”というもの。これは、紫外線のエネルギーが皮膚内部の核酸※やタンパク質、脂質など多くの生体高分子に吸収されて活性酸素などをひき起こすことから始まります。続いてこの活性酸素が、二次的にたくさんの生体高分子を傷つけてDNA損傷によるさまざまな症状を誘発。なかでも、持続的にメラニンの合成を刺激することによる色素沈着やシミ、真皮エラスチンとコラーゲンを変性させることによる弾性繊維症(だんせいせんいしょう)はシワやたるみの発生原因として有名です。老化という言葉がついていても年齢による変化ではなく、どれだけの紫外線を浴びて肌の奥にダメージが蓄積しているかどうかが鍵となります。
したがって、こうした「UV-B」と「UV-A」のダメージにおける仕組みや対策のちがいを踏まえた上で、“飲む”日焼け対策サプリメントを活用することに意味があると考えるのがよいでしょう。
※核酸(かくさん):すべての生体内に存在する高分子物質で、遺伝とタンパク質合成に重要な役割を担っている。
研究で解明の進む、皮膚のアンチエイジング
近年の研究で、シミやシワのほかにも「UV-A」がひき起こす肌へのわるい影響がすこしずつ明らかになってきました。それは、健康なヒトの皮膚の細胞に「UV-A」をあてると“SASP関連因子”※と呼ばれる因子が増えて、これが周囲の細胞にも影響を与え、肌細胞の老化を誘導していくという研究発表です。
また、最近では多くのひとになじみの出てきた活性酸素についても、より詳しい研究による解明が進んでいます。なんと、紫外線で起こる“光老化”は、私たちの身近な環境にあるLED-BL(ブルーライト、発光ダイオード発生青色光)による長期的な暴露でもひき起こされる可能性があるというのです。これにも活性酸素が関与し、ある論文(2019年)では特異的なLED-BLをあてたヒトのケラチン細胞などをつかった実験で、オリーブ果実からのヒドロキシチロソールという成分が損傷から肌細胞を保護する可能性があるとも発表しています。
私たちはこうした研究によって開発される商品や新しい情報に目を光らせつつも、まずは今すぐに取り組むことのできる物理的なUVケアやサプリメント摂取などで対策していくことが得策でしょう。
※SASP関連因子:SASP(Senescence-associated secretory phenotype)とは、老化した細胞自身が周囲にあるほかの細胞へも影響を与えるような因子(例えば、IGFBP7、インスリン様増殖因子結合タンパク-7)を分泌していく現象のこと。この因子を細胞に添加すると、老化細胞で高発現する遺伝子が増加することが分かっている。
“飲む”紫外線対策サプリの代表的な成分|その②
それでは、具体的にどのような成分が紫外線対策としてメリットのあるものなのでしょうか?紫外線対策に関するサプリメントを探してみると、「機能性表示食品」や「機能性成分」と書かれている商品を見かけることがあります。これらの多くは、紫外線があたることによって受けた肌で、ダメージの修復や回復を早めるように働く機能を備えた成分が配合されているものです。
前述のとおり、「UV-A」やブルーライトにあたると活性酸素が発生し、これが肌における各層の水分保持能力を低下させたり色素沈着を濃くしたりすることが分かっています。また、活性酸素は遺伝子を傷つけることによりシミやシワのほかにも多くの障害を生むため、サプリメントを選ぶなら抗酸化作用や水分保持作用に着目するのがよいかもしれません。
具体的な成分でいうと、“アスタキサンチン”や“オリーブ由来ヒドロキシチロソール”などが有名です。この2つは抗酸化作用をもつ機能性表示食品としての届出件数も多いため、複数の商品を見比べて自分にあったものを選ぶことも出来るでしょう。一方、前述のフェーンブロックとニュートロックスサンの2つは機能性成分として販売されているものはありません。(2022年8月5日時点)
“飲む”紫外線対策サプリの代表的な成分|その③
そのほかにも、肌に働きかけるような“飲む”日焼け対策サプリメントは数多く存在します。たとえば、コラーゲンやビタミン類、ポリフェノール類、ヒアルロン酸など様々です。これらはすべて、単独では効果が得られにくいということを念頭においておきましょう。基本となる食事や睡眠、物理的なUVケアと乾燥対策、そうしたケアを行いながら追加で取り入れていくことが大切です。そして、きちんと体内に吸収してメリットを生み出していくために、腸内環境も整えておくことをお忘れなく。
きっと、これらの成分は直接的に肌にとって有意差のある効果を発揮するまでの判断がつかないとしても、私たちの身体が本来の回復力や生体維持活動をおこなうための助けとなってくれることでしょう。
サプリメントから医薬品に移行するタイミング
以上より、“飲む”日焼け対策サプリメントは抗酸化作用などによるダメージの軽減や回復にも有用であることは確かです。重要なのは、現時点において飲むだけで日焼けを防ぎ、皮膚がんのリスクから守ることが出来るようなものは存在しないということを認識しておくこと。
そしてもうひとつ重要なのは、サプリメントを飲んでいても出来てしまったシミやたるみについては医薬品をうまく活用するということです。気になるひとはドラッグストアやECサイト、薬局などで薬剤師や登録販売者などに相談してみましょう。たとえば、肌に関するトラブルについて有名な医薬品成分は、トラネキサム酸やL-システインなどがあります。また、これらの一般用医薬品を自分で買って試してみても効果を感じにくい場合は、医療機関を受診することも検討してみるとよいでしょう。