【薬剤師の目線】日焼け対策サプリの基本!“塗る”と“飲む”のちがい(前編)

【薬剤師の目線】日焼け対策サプリの基本!“塗る”と“飲む”のちがい

2022年で明らかになっている日焼け対策の基本とは?結論は、“塗る”日焼け止めをベースにした上で、日焼けによるダメージの軽減や回復を早めるために“飲む”日焼け対策サプリメントを追加することです。しかし、商品の説明欄に「MEDが56%に増加」と数字が書いてあるだけで何だか効果があるように思いがち。前編の今回は、「塗るのが面倒なひとへ」などといった誇大広告につられないようにする知識と選び方について解説します。

ウソ・誇大広告の可能性がある表記例を知る!

2022年までに分かっていることで、“飲む”日焼け対策サプリメントが“塗る”日焼け止めの代わりになるということは認められていません。また、飲むタイプの日焼け「止め」も存在しないため、そのような表記をしている商品は誇大広告かもしれないと疑うことも大切です。一方で、サプリメントは意味がないという訳ではありません。なぜなら、日焼け「止め」にはならなくても、日焼けしたときに肌の負担を和らげる作用を期待して併用することにはメリットがあると言えるからです。

つまり、「飲む紫外線対策」や紫外線の延長線上にある「抗酸化作用」「光保護作用」などを対象に書かれているのは、一定のエビデンスを持つ成分もあって間違いではありません。

ここでは一旦、次にしめす表記について確認しておきましょう。

 

【ウソまたは誇大広告の可能性がある表記例】

 

  • 日焼け止めサプリメント※

  • 飲む日焼け止め(sunscreen pills)

  • 紫外線防止効果が56%Up(アップ)

  • 紫外線防止サプリメント

  • 紫外線ダメージを半分以下にカット

  • 24時間つづく紫外線予防

 

※日焼け止めサプリメント:この言葉は近年よく使われている造語のひとつ。2022年時点で、食品の一種であるサプリメントの摂取により日焼けが防止できるものは存在しません。

“飲む”紫外線対策サプリの代表的な成分|その①

インターネットなどで、「飲む」「日焼け止め」「紫外線」「サプリメント」などと検索すると多くの商品や成分が出てきます。なかでも多い成分が、フェーンブロック(またはファーンブロック、Fernblock)とニュートロックスサンの2つ。

1つ目のフェーンブロックはシダ植物から抽出された成分で、日本名をダイオウウラボシ、学術的な成分名はPolypodium leucotomos(ポリポディウム レウコトモス)といって頭文字をとり“PLエキス”と呼ばれることもあります。2つ目のニュートロックスサンは、かんきつ類のシトラスやローズマリーに含まれるポリフェノール類です。

これらの成分を含むサプリメントは2000年頃からアメリカで「Sunscreen pills」と呼ばれて販売され始め、近年では日本のECサイトでもよく見かけるようになりました。そして、その商品を説明するサイトでは、海外でわずかな人数を対象におこなわれた実験データが掲載されているものもあります。一見、グラフや数値を見るとすごく効果があるように思えるかもしれませんが、これには客観的かつ総合的に理解するという意識をもつことが大事です。

「SPF」の正しい理解とは?

そうは言っても、専門的な知識がないとグラフや論文を読み解くのは大変で、詳しく理解するのはむずかしいと感じるひとも多いでしょう。そこで簡単に、おさえておきたい知識は「SPF」「MED」「PA」の3つです。

 

まず1つ目の「SPF(sun protection factor)」は紫外線のうち紅斑(皮膚の表面を赤くする)の原因となる「UV-B※」を防ぐ効果の指標で、“サンケア指数”ともいいます。注意したいのは、SPFはUVケア化粧品を塗っていないときに比べて塗ったときに、何倍の紫外線にまで耐えて赤くならないかを示す数値で、“何時間まで耐えられる”という時間を示すのではありません。元々は1978年にFDA(米国食品医薬品局)が公表したもので、そこから日本ではメーカーごとにばらつきのあった測定法を統一したガイドラインが1991年に完成しました。この指標の上限は50までで、測定した結果がこれを超えるUVケア化粧品については「SPF50+」と表記されています。

ここで、塗る日焼け止めクリームや化粧下地なら、大体20~40位のものが一般的でしょう。

それに対し、研究で報告されているフェーンブロックとニュートロックスサンのSPFは、毎日しっかり3ヵ月間のんだとしても、わずか2未満です。この一桁もちがうSPFの値を見れば、これらを飲むだけでは紫外線を防止することがむずかしいと一目で分かります。

 

※UV-B:紫外線のもつ波長が280~320nmのものを指し、この波長が短いほど身体への影響力は強い反面、長いほど皮膚の奥深くに入り込む。UV-AはUV-Bよりも波長が長い(320~400nm)ため皮膚の奥深くまで入り込み、日焼けのような短期的な影響よりもコラーゲン変性やシワなどの原因となる。

肌が赤くなりにくい「MED増加」の意味は?

続いて「MED(最小紅斑量、Minimal Erythema Dose)」というのは、照射して16~24時間後にわずかでも赤みを起こすのに必要な紫外線の最低量のことで、値が高いほど同じ量の紫外線にあたったときに肌の赤みが起こりにくいことを示しています。

ここで重要なのは、「SPF」と「MED」の関係です。SPFは、「日焼け止めを塗った部分のMED(①)」を「何も塗らなかった部分のMED(②)」で割ることによって算出されます。たとえば、何も塗らないときのMED(②)が70※のひとで、SPF1の日焼け止めを塗った場合のMED(①)は70ということになり、これはつまり100%です。同様にSPF10のものを塗った場合は、1000%への増加が見込まれます。したがって、一般的な塗る日焼け止めクリームなどSPF20~40のものを使えば、そのMEDは2000~4000%への増加が見込まれているという訳です。

一方、フェーンブロックとニュートロックスサンのMED増加がおよそ50%の増加だというところを見ると、塗る日焼け止めには到底およばないということが分かるでしょう。

 

※MEDの単位:〔kJ/m2〕本文中では省略。

2013年から始まった「PA」って何?

さいごに「PA(Protection grade of UVA)」とは、SPFと同じような方法で「UV-B」ではなく「UV-A」だけを対象として算出した2013年からの指標です。これが設定された背景としては測定技術の進歩や測定法の改訂、生活者の「UV-A」に関する知識の向上により高性能のUVケア商品が求められるようになったことがあげられます。PAは「UV-A」を防止する効果のつよさに応じて、1995年以降では4段階(PA+、PA++、PA+++、PA++++)で表記され、「+」が多くなるほど効果がつよいというものです。

環境省では生活シーンに合わせて「PA」と「SPF」を組み合わせ、日焼け止めを選ぶように奨めています。

 

生活シーンに合わせた紫外線防止用化粧品の選び方

〔出典元:環境省「紫外線 環境保健マニュアル2020」p.35<図3-2生活シーンに合わせた紫外線防止用化粧品の選び方>〕

見方を変えると、“飲む”紫外線対策サプリもメリットがある!

ここまでは「SPF」や「MED」を軸とした紫外線に対する防御の効果を見てきました。これだけ見ると、飲む紫外線対策サプリメントでは意味がないと思うかもしれません。しかし、見方を変えるとメリットもあり、どこに目的をおいて摂取を考えるかということが大切でしょう。(メリットについては後編で解説)

実際に、フェーンブロックとニュートロックスサンにはそれぞれ、抗酸化作用があるという論文もあります。ただ、現時点でこれらに関する日本での十分なデータがある訳ではありません。前述の“ウソ・誇大広告”になっていないかどうかを、自身でしっかりと確認してください。そして、ベースとなる“塗る”日焼け止め対策や、日傘などの物理的な対策をしっかりとおこなった上で、摂る目的を考え取り入れていくのが賢い選択でしょう。

この記事を書いた人

ドラッグストアで売っているサプリメントの効果は? 株式会社リテラブースト 代表取締役 曽川雅子
資格 薬剤師、登録販売者、保育士
経歴 現・東北医科薬科大学卒。2017年に株式会社リテラブーストを設立し健康に関するイベントや、健康診断でなじみの9項目が指先から1滴の血液ですぐに分かる検体測定室(簡易血液検査)をプロデュース。15年間の薬局勤務と人事経験を活かした執筆活動では、大手の介護系企業や製薬企業からウェルネスに関する総合情報配信サイトまで2年間で累計100本を超える記事提供の実績がある。

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